第2号 2006年7月21日発行


contents ご挨拶
ご挨拶  私は、蓮の花が好きである。
 夏の朝、水面に咲く花は、花弁20数枚、芳香あり、花色は紅、白、淡紅など、まさに浄土の世界である。花を楽しみ、蓮根や種子も食用にする。薬用として止血や強壮にもなる。
 この蓮のふる里、泥の評判が悪い。例えば、こそ泥、泥仕合、泥酔、泥縄、泥沼…
 しかし文明は、泥により栄えたと言っても過言ではない。水と土の結婚したもの、泥は、すべての植物のゆり籠である。
 かつての文明を思い出してほしい。エジプトにはナイル河、中国には揚子江と黄河があるし、インドにはインダス川がある。メソポタミア文明はチグリス川とユーフラテス川の間におこった。河が運ぶ泥が作物を育て、文明を育んだのである。
 さて、この泥を活かそうと、中国のトンガリ砂漠の中にある砂漠研究所に青々と育つ果樹や野菜が溢れている。
 なぜ砂漠に?答えを先に言ってしまえば『泥』である。
 この為に、遠く離れている黄河から管を引いて、砂漠に水を撒いているのである。水も必要だが、それよりも水に含まれている泥を砂地に溜めていっているのである。
 撒き続ければ、1年に1cmほど積もる。10年で10cm、50年すれば50cm。30cmの土があれば、ある程度果樹や野菜が造れる。
 この気の遠くなるようなことをやり続けているのも、中国人なのである。日本人の芭蕉なら、「朝露に よごれて涼し 瓜の泥」と詠んでみせるでしょう。
 もう一つ薀蓄を紹介すれば、あの美しい「本場奄美大島絣」は、まず絹糸を車輪梅のタンニンで染め、奄美の蘇鉄葉の腐葉土の鉄分とこねるのである。そうすると、布にコシができ、かつ柔かく深い黒色に染まるのである。泥は貴重である。
 この挨拶を締め括るにあたり、私が最も好きな漢詩を紹介しよう。皆様もぜひ頭に定着させて欲しい。豊かな人生が一層豊かになると思う。

  落紅は是れ 無情の物にあらず
  化して春泥を作り 更に花を護る
龔自珍(1792~1841)

 私たちのこのクオーレ(心)も、春泥となり皆様の豊かな人生を応援したいと考えている。

井上 健雄
エコロジー研究会
『LOHASとは何か?』

『時間軸でみるLOHAS』

『一つのLOHAS』
書籍紹介
編集後記
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