第3号 2003年4月30日発行

contents 「豊かさあふれるエコロジーマーケット」
豊かさあふれるエコロジーマーケット
地球は30分毎に、東京ドーム200個分ぐらい砂漠化している。反対に、この瞬間にも人は増え続け、一年に7800万人増えている。その1人当たりが273キロの穀物を食べている。そしてその穀物の1トン当たり、1千トンの水がいるといわれている。そうすると、その穀物を育てるのに、利根川の年間流量の5倍ぐらいの水がいることになる。その結果、我々は、人口が増える一方で砂漠化が進むという非常に矛盾した世界に生きている。にも関わらず、日本は毎日50億円ぐらいの食品廃棄物を捨てている。こうした凄い浪費生活をどう改めればいいかというのが、このエコロジー研究会の取り組む趣旨でもある。

我々の生き方は非常に無駄が多い。しかしながら勿体ない精神をみつけたら豊かなマーケットはある。今日はいろんな形で環境にもよくて、エコノミーにも役立てようというWIN-WINの法則を目指しておられる企業家が多いと思うが、今回はそのソリューションの一つとしてバイオマスをご紹介したい。

木質バイオマスというのは、最近一番大きな問題になっていると言える。世界でも都市に最も大きな森林が眠っていると言われる。更に日本の都会にも、世界でもっとも巨大な森林が眠っている。なぜか。もともと日本は山が多いが「都心に山があるはずがない」と思われるかもしれない。そうではない。都心では紙や木やいろんな形でバイオマス(の製品)
があるということである。住宅や建材にも木がよく使われている。まさに木の宝庫だ。日本の家は25年から30年で建て替えされる。それに対し、ヨーロッパの英国では141年、米国でも103年と建て替えまでの期間が長い。日本は木中心の文化であるために、非常に更新が早い。新しいバイオマス資源として廃棄物がどんどん出てくる時代に我々は生きていると言う事である。

今、日本では新規に120万戸の家が建っている。英国では16万戸しか建っていない。人口の差はあるとしても、これは圧倒的な差であり、120万戸(マンションも含めて)建つということは、逆に言えば120万戸の家が潰れていっているということになる。都市が、バイオマスの宝庫であると考えると、このバイオマスを利用していくことに一つの方向性があるのではないか。

木材工業以外に排出されるバイオマスの総量は、日本の木材の年間生産量にあたる2180万立米。これを日本の総エネルギーを石油換算すると5億3千万トンのエネルギーを使っていることになる。これが廃棄物として利用できるバイオマス換算すると3900万トンとなる。つまりバイオマスエネルギーは、総エネルギーの7%に当たり、非常に有望なマーケットとして存在している。

日本は世界最大の太陽光発電国である。しかし世界最大であったとしても、そのエネルギー量は石油換算で4万5千トンしかない。廃棄物のバイオマスの可能な利用量と比較すると、900分の一にしか過ぎない。

CO2の問題に関しても、CDM(Clean Development Mechanism )でCOP5、COP7の会議で原子力発電だとCO2が出ないという発表があり、CO2削減ついて一時は原子力が力を吹き返すかと思われたが、原子力によるCO2削減は、含めないということが決まり、原子力の復活は考えにくい。そういう中、新しいこのバイオマスの中でいかにCO2を削減するソリューションを見つけるかが大きな勝負の別れ目になってくるだろう。

以下、バイオマスの利用の例をいくつかご紹介したい。
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1. 胡桃の皮の粉末:半導体や電子部品の研磨剤として最適である
 スタッドレスタイヤの「オブザーブ:東洋ゴム工業」はクルミ入りである。
2. 月桃(沖縄の有名な一年間成長する植物):非木材紙の壁紙としても好評である
3. ウルフン:塗料
4. 珪藻土:植物性プランクトンの死骸が堆積してできた土で遮光性、吸水性、放湿性、吸着性が優れており、かつ有害物質も吸収する。
5. ホタテ貝:内装材としてチャフローズ社が開発している。除菌・抗菌・防虫・消臭の他化学物質の吸収・分解機能を持っている

こういう形でバイオマスというのは、新しいマーケットとして非常に面白いものがある。まだまだ種は尽きないが紙巾が尽きたので、ここまでとしよう。


井上 健雄