昔、イギリス(16〜17C)にはグランド・ツアーなるものがあった。
貴族の息子が、16〜17才になると家庭教師つきでフランス、イタリア等のヨーロッパ大陸に数年間旅行するものである。コックから女中、御者などを連れて、馬車数台で行く豪勢なものである。
家庭教師も『リバイアサン』の著者トマス・ホッブズのような大物もいて、それは勉強する気なら大変な機会ではある。
そして各地域の各界のエリートたちとの交流や、毎晩の観劇・パーティという日常性を超えたものである。
しかし、このツアーから帰り立派になったという人たちの名前を聞かない。
語学を学ぶには年をとり過ぎだし、文化を理解するには幼いし、女性への興味が際立つだけで、親の監視の目も届かない中で、贅沢に贅沢を重ね、悪い奴に儲けさす位にしか役に立たないということで、徐々に沙汰やみとなった。
このグランド・ツアーを、私どもは、日常的に観劇、パーティ、遊びとしているのではないだろうか。昔ならグランド・ツアーでする馬鹿げたことを、日常的にやっていると言えなくもない。ちょっと反省。
現代人も本来のグランド・ツアーを持つべきだと申し上げたい。
それも省エネ、省マネーだとしても、日常性を離れる休みを4〜5日(ちょっと侘しい日数ですが)とって、異次元ジャンプをしたらどうだろう。
そのコツは、昨日までの時間の使い方、金の使い方、思考を変えて行動することにある。
そして賈至の詩であろうと自分の詩のごとく
草色青々として柳色黄なり
桃花歴乱として李花香し
東風為に……
吟じて歩く、酔ふことである。
その先に2011年のビジョンが見えてくるのである。
いい年末を過ごし、充電した新しい姿での出社してください。この一年ありがとう。
井上 健雄