フィランスロピー研究所 今月のありがとう
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2016年3月のありがとう
イメージ画像 エッセンシャル思考

 私たちは、いつも多くの仕事と使える少ない時間を持っている。
 それなりの仕事をしているビジネス・ヒューマンは、誰もがこうした状況に置かれている。
 この状況において、せっせとパフォーマンスをあげていく人と、仕事に溺れてどれもが不十分になっている人がいる。
 何が違うか。
 それは、トレードオフ思考ができるかできないかである。

 トレードオフとは、あちらを立てればこちらが立たず、両方を立てれば意味がない、そんな関係である。
 最も優先順位の高いものを選ぶこと、それが大事なのである。

1.高い給料VS.自己実現
2.安定した仕事VS.ベンチャー、起業
3.より早くVS.より良く
4.高い付帯サービス付運賃VS.付帯をそぎ落とした安い運賃


 最後4の例なら、ローコスト対策を徹底的に打ち出したサウスウェスト航空に対し、同じようにローコスト対策を取り入れた、コンチネンタル航空(現在ユナイテッド航空に併合)がある。
 古い例だが、貴重なトレードオフ例である。
 インターネットで検索されればいくらでも出てきますが、私が書いたものは2006年2月の今月の言葉で紹介している。
 古い例で恐縮だが、企業レベルの歴史時間に耐えているものである。
 サウスウエスト航空は、ハブ経由をせずに、地方から地方へのポイント・ツー・ポイントの取り組みによりコストを構造的に下げている。
 また、ローコスト化のために航空機を1種類に限定し作業効率を上げる、パイロットも掃除するし、食事提供なし、座席指定なし、チケットレス等々…極限にまでサービスを絞り、安さを創りだしている。

 つまり戦略的ポジションの確立の為には、別のポジションとのトレードオフなしには維持できないものである。
 ある意味で相手の良い所どりする、要領をかます、仕事を省エネでごまかす人々は、トレードオフから逃げているのである。
 が、逃げ切れず、小さなパフォーマンスというより失敗しか残せないことになる。
 コンチネンタルは、根本的なトレードオフすることなしに安さ、つまり少しのサービスという戦略を取ったことにしかならず、結果的に吸収されるということになったのである。

 もっと分りやすい例は、ジョンソン・エンド・ジョンソン社のタイレノール事件への対応がある。
 圧倒的な売上を誇る看板商品のタイレノール(解熱鎮痛剤)を服用した人が、相次いで亡くなるという事件があった。
 その時ジョンソン・エンド・ジョンソン社は、タイレノールを回収すべきか、株主への配慮として様子を見るか迫られた。
 彼らの「我が信条」に、顧客優先がはっきり示されていた。
 そこでタイレノールを回収するという意思決定をした。
 損失額は1億$を上回るものであったが、実行された。(後日、何者かが瓶に毒物を混入したことが分った)
 この対応は、ジョンソン・エンド・ジョンソン社の信頼を一層高め、株主にも評価されるものになった。

 このようにトレードオフは痛みを伴うが、しっかり正確な対応をすれば絶好のチャンスであることを忘れてはならない。
 このトレードオフの関係を多面的に整理し、絞り込んだターゲッティング決断を、私はエッセンシャル思考と呼びたい。
 この3月でH27年度も終了し、4月より新年度に入ります。
 みな様エッセンシャルして始めようではありませんか。

井上 健雄

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