エコロジー研究会
時間軸でみるLOHAS
環境省近畿地方環境事務所 所長 出江 俊夫 氏 
エコロジー研究会(H17.12.26)より


自己紹介

 はじめまして、環境省の近畿地方環境事務所の所長の出江でございます。肩書で紹介して戴きましたので、肩書で今ご挨拶したのですが、今日は一応個人の資格で参っておりまして、休みを取って個人的に参りました。縁あってお声かけを戴きましたので、参加させて戴きました。
 今日はLOHASという話でお題を戴いたんですけれども、私はその方面に特に詳しいわけではないので、まず若干エクスキューズをさせて戴いて、その後今までやってきたことの中でそれに関するようなところで気になるところを1,2点、というような形でお話できればと思っております。
 地方環境事務所は10月1日に新しく発足しました環境省の地方組織でございます。もともと地方組織は自然保護事務所というのと地方環境対策調査官事務所というのがあったんですけれども、それは本省にぶら下がった形での組織だったものですから、それを正式の地方環境事務所という形で10月1日から発足しております。ここにお集まりの皆様方はいろいろ環境にお詳しい、またご興味のある分野の方々だと思いますので、また色んな形でお世話になり、一緒になってやらせていただく機会があるかと思います。どうぞよろしくお願い致します。


はじめに

 最近の話題では、やはり地球温暖化問題とかいろんな話がある中で、ライフスタイルを変えていかないと、ともかくもうもっていかないという認識がいろんなところで言われておりまして、そういう点では今日のテーマのLOHASという話は、それに繋がる部分、ライフスタイルを変えていくんだ、というような思いの中の一つの形なのかなあ、と思って眺めております。ただそれ自体に特に行政として何か関わっている、直接的に関わっているわけではないので、むしろ私がこれまで個人的にというか職業柄あちこちを回りながらやってきた中で感じたこと、という形で今日は話をさせて戴きます。
 お配りした資料に書いておりますように、私は今回近畿地方環境事務所という形で環境全般をみるようになっておりますけれども、もともとは国立公園の業務をずっと20数年間やっておりました。屋久島にいたり北海道にいたり万座にいたり、そういういろんなところにいてやっております。ただ面白いことに私共は、地方に行ってまた東京に戻って地方に行ってというのを繰り返しておりますので、そういう意味で地方的な目と東京的な目というか都市的な目を、ある意味両方見ながら地方を見る、というようなことを繰り返してきたようなところがございます。


LOHASって何だ?

 今回のLOHASという話ですけれども、今ひとつ私はまだよく分かっておりません。それでソトコトを読んだり日経エコロジーを読んだりする中で、まあこんな感じかな、というのはあるんですけれども、今のところそれは多分、いくつかのキーワードをもったものを、それぞれの形で相当自由度をもって展開されている。まあこれからどういうふうに収束されていくのか分かりませんけれども、そういうのかなあと。一体これが何なのか、私自身もよく分からない。


LOHASはかっこいい?

 ただソトコトなんかを見ながら思いますのは、やはり関わっておられる方がこの生き方はかっこいいんだということをひとつ表に出しながら、またそういうことを自然の関係、健康の関係に繋げながら、色んなものに関わらせて展開するというようなところがある。そういう意味で、ある種の流行りものの世界の中にある共通性というものがあるのかなあと思って、それはいい面もあり、ちょっと危うさをもったようなものなのかなあと感じているところです。
 ただLOHASの話の中で、これまでの流行りものとちょっと違うなあと私が思っておりますのは、時間軸的なものがその概念の中にあるのかなあというところです。一方そういう時間軸みたいなものをみた場合、ひょっとして何か新しいことがこのジャンルの中で起きうる可能性をもっているのかなあ、というのが私の感じでありまして、そういう視点から続きを話してみたいと思います。


1週遅れのトップランナー

 現地をいろいろと回っておりまして、まさにLOHAS的なというか、自然持続的な視点をもった自然の利用とか健康とか、そういうものはむしろ素材そのものは地方の方が持っているんだろうと思います。私が一番今まで過しやすかったのは、例えば香川県庁に出ておりましたときの高松は非常に過しやすいところで、県庁から出て1時間半でどこでも行ける。30分出たら農地があって、ちょっと行ったら山があって。キャンプでもできるし、めだかもどじょうも何でもいる、というような感じがすぐある。で、戻れば都市的な生活もある。そういうところで生活をしておりまして、私自身非常に気に入っていたんですけれども、そこでいつも話をしていましたのは、ここに書いてある「1週遅れのトップランナー」だということです。「トップランナー」だっていうんですけれど、まだあれが足りないこれが足りない、高速道路がないと、みんな足らないものを挙げて、都会を追いかけるっていうイメージがあって、いまここに都会の人たちがほしいと思っているものがあるのに、っていつも思ってました。まあそのときは言い方が悪かったんだと思いますが、どうも「1週遅れの」っていうところがいつも引っ掛かって、不満に思われていたんですけれども、「トップランナー」のところに力が入れば、もうちょっと納得してもらえたのかなあと思いました。
 やっぱりそこのところに気づいてもらえない部分が、まあ今のLOHASも東京的な、都会的な人たちが一定の恵まれた生活をしながら、スパイス的に環境をとらえるとか、そういうものに留まってしまっているところなのかなあと。ここのところを変えられればものが変わるし、変えられなければ結局今までの流行りものと一緒になってしまう、というような気がして、そこが危ういなあと思っているところです。


クールビズ、大成功?

 そういうふうに変えていくにはどうしたらいいのかなあとつらつらと思っていて、まだよく答えが分からない。ただ最近環境省関係でクールビズっていうのが流行って、2匹目のどじょうでウォームビズっていうのをやってますけれども、あれって面白いなって思ったのは、普通の人が普通のようにみんな参加して、結構社会現象として定着した。一気に定着した。今までいくら省エネ省エネといって役所が取り組んでもうまくいかなかった。まあ理由はいくつかあると言われていて、大きく広告宣伝費を投入して、しっかり民間の力を活用して浸透させたというところが理由だとは言われていますけれども、ああいう形で普通の人も普通のように取り組んだということは、これからもああいう形が、形は変わっていっても定着する可能性を持っている。そういうふうにLOHASがうまくいけるのかなあ、どうしたらそういうふうにいけるのかなあ、というところが興味のあるところです。


時間軸でみるLOHAS

 そういう面では時間軸かなと実は僕は思っていて、まあ持続っていう話がLOHASの中に入っていて、そういうふうにみたときに、前からあるものに対して目が向くとか、昔あったものに対してもう一回みる、それから質的な意味で上質のものを求めるということにおいて未来に対して目がいくとか、そういうふうに時間軸が設定されて、今の価値だけではなくて、ということが出たことによって、意外と発展性があるのかなあ、というふうに思っています。
 そういう中で先ほど申しましたように、今のところ都会で流行っていて田舎で流行りきれないものだと思うんですけれども、素材がいっぱい田舎にあって、田舎って言葉がいいのかどうか分かりませんけれども、住んでいたってことでその言葉を許していただけると、地方なりそういうところにもいっぱい素材があって、そういうものをうまく現代的な視点を加えることによって位置付ける、整理をするということによっていくらでも出てくると。
 考えてみればクールビズだって、ちょっと前の開襟シャツで麻の背広を着てかんかん帽をかぶってっていう時代だったら、ネクタイなんかしなくてもちゃんと夏はそれなりの服装をして、そんなに礼儀に反しない格好をしていたはずなのに、もう忘れてしまっている。ちゃんと日本人の流れの中で、日本人になじむものとして、多分過去の中にいっぱい遺産があるはずです。まあ風呂敷にしてもそうですし、色んなものがある。


環境でつなぐLOHAS

 そこでLOHASが面白いのは、そういうのに車の話が出て、ハイブリッドの車のCMにデカプリオが出てっていう、あれもLOHASだっていうから、そこまでいっちゃうとちょっと僕はよく分からないんですけれども、ただまあ一般的な自然素材とか自然系とか、持続性のある資源の使い方っていう流れでみればいくらでもそういう部分があるので、そういうところでうまく環境でつないでいって、単なる一過性のものではないLOHASの流れができればいいなと。お題を戴いたあと自分なりに考えていたのがそんなところでございます。
 ただいずれにしろ、今回の研究会のテーマであるソリューションというところまでは私は到底至りませんので、まあ思いつくままにつれづれに、ということで、少しきっかけとしてのお話をさせて戴きました。どうもありがとうございました。どうもよろしくお願い致します。

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