エコロジー研究会
一つのLOHAS
〜県土を知り琵琶湖を護る〜
滋賀県琵琶湖環境部環境管理課 三和 伸彦 氏 
エコロジー研究会(H17.12.26)より


自己紹介

 みなさんこんにちは、滋賀県の三和と申します。よろしくお願いします。
 今日は突然のご指名で、そしてテーマもLOHASということで、何をお話ししようかと思ってまいりましたが、とりあえず滋賀県庁の仕事というよりは、私がその仕事を通じて今までに感じてきたことをお話ししようかと思います。
 私は化学の技術職員ということもありまして、環境の仕事をずっとやってまいりましたが、その中にはやっぱり色んな矛盾があると感じます。その中で問題を解決するためには、どんな視点から考えればよいのかと、自分なりにずっと考えてきました。その結果、現在は今からお話しする3つぐらいにまとめていったらどうかと思っています。


自分の町を知る

 一つ目は、「自分の住んでいる町をどうすればよいのか」という視点を持つことです。
 他のどこでもなく、自分の生活している地域で、私は一体何ができるのか?自分の地域をよくするっていうことは何なのかということですね。そのためには自分の住んでいる町を知り、自分の親のことを知り、自分自身のことを知るということかな、と思うのです。それがまず一点目。


科学的に考える

 次が、「科学的に考える」ということです。例えば、私は今土壌汚染に関する仕事をしております。多くの方が、「土壌汚染は恐い。いつかとんでもないことが起こるのではないか。」というようなことを思っておられるのではないかと思いますが、実際には単に土壌汚染がそこにあるということだけで何かが起こるわけではありません。
 例えば、汚染された場所で子供が毎日遊んでたくさん土を吸い込んだとか、毎日毎日その汚染された水を飲み続けるということがない限りは、その汚染物質が身体に入るということはないということです。要するに、土壌汚染はきちんと管理をしながら付き合っていくこともできるはずなのに、なぜか妙に中途半端な知識だけで、物事が感覚的に判断され、そして必要以上に恐がってしまうということがあるんじゃないかな、と思うことがあります。そういうときに、やはり「科学」をベースに考えることの大切さを改めて感じている、ということでございます。


「土壌汚染」をキーワードに

 それから三番目がちょっと説明が難しいんですけれども、「関係を見つけて新しい方法を創る」ということです。これだけでは何のことだか分からないと思いますが、例えば今日の「LOHAS」という言葉を聞いたときに、LOHASというイメージが他の情報といっぱいつながっているということに気がつきます。
 例えば最初に郡嶌先生がおっしゃっていましたけれども、「LOHAS」はスローフードとかスローという言葉の持つイメージとすごく似ている、繋がっていると感じます。他にもいろんな言いかえをしてみると分かると思います。私が調べたインターネットのサイトでは、LOHASとは「経済的な成功を最優先しない」というものの考え方やライフスタイルだというふうにおっしゃる方もおられます。これもLOHASとつながっているわけですね。LOHAS的な人は誰かというと、ソトコトなどでは坂本龍一とかがでて来るわけですが、一方で、例えばルバング島から帰ってこられた小野田さんとかは、自然のものを活かした生活を実践されていると聞きますが、あれはLOHAS的というイメージとはちょっと違うように感じたりもします。
 だからLOHASを考えるときには、LOHASという言葉の周りに関係を見つけていって、そこでLOHAS的なものをひろげていくヒントを見つけてみるのも一つの方法です。私の仕事の場合ですと、土壌汚染の対策を考えるときに「土壌汚染」という言葉からイメージを広げていって、あるいは滋賀県らしさとは何かということを考えてみて、いろんな関係を見つけていって、そこで具体的な対策の方法をみつけていく、ということもひとつのキーワードになるのではないかと思います。


地域との関係を考える

 関係を見つけるという意味では、「絆」とか「結」とか「編」とか糸偏の漢字がすごく大事かなと感じるのですが、さっきちらっと郡嶌先生のお話の中に水俣の分裂の話がありましたけれども、水俣病を担当されていた市役所の吉本さんという方が、要するに地域の「結」というか、地域を結びなおすということが大事だということで、地元学というふうに今呼んでおられますけれども、私が一つ目に申し上げたことに関係しますが、自分の住む町を知るという試みをやっておられたりします。いろんな意味で関係性がみえなくなっている時代、地域をどうやって繋いでいくのか、そして、やはり、自分の住んでいる地域に自分は何ができるのかということが問われています。それは難しいことではなく、今、例えば自治会長を任されたら私はできるのだろうかとか、子供が危ないと言っているけれども、子供たちが登下校するときに自分は送り迎えができるのか、みたいなところが本当は一人一人に問われているのではないかと私はすごく思うわけです。
 ということで、私の問題意識としてはそういう三つのところに集約しながら、いろいろ起こる日常の問題をこの三つの考え方に照らし合わせてみて、自分自身で納得できるやりかたを見つけていくというのが、仕事を通じて今のところ自分なりによりどころにしているところということでございます。


滋賀県を知る

 さて、滋賀県のことをみなさんご存知でしょうか。この際、滋賀県が一体どういうところなのかということを改めて知って戴くということも必要かと思います。例えば滋賀県がどういう位置にあるかというと、例えば、飛行機で関西空港をおりますと、関西空港から琵琶湖の出口である瀬田川の起点までの距離と、そこから先、滋賀県の北の県境までの距離がほぼ同じ距離と言われています。


大阪の水を汚しているのは何か

 それと滋賀県、琵琶湖の回りにはおよそ140万人の人が住んでいるわけです。京都や大阪の皆さんは普通、「私たちは琵琶湖の水を飲んでいる」とおっしゃるんですけれども、じゃあその水を汚しているのは誰かというと、滋賀県では、三次処理までの下水道がすでに大分整備されているわけですが、それが一歩京都のほうに流れますと、京都市内だけでも滋賀県より多くの人が住んでおられて、結局そこで滋賀県のように高度な処理がされていない処理水が入ってきて、さらにどんどん汚れて、最後は大阪湾に注いでいる、というような状況があるわけですね。そういうことで、琵琶湖の水を飲んでいる、汚れた水を飲んでいるという意識が、本当はもう少し具体的に考えてみたときに、科学的にはどういうことなのか、本当に大阪の水を汚しているのは何なのかということをもう一歩進んで考えてみる、ということも二番目の科学的に考えるというところに繋がるのかなと思っています。


県土の姿を知る

 滋賀県の半分は山林です。残りが大体3分割されまして、1/3が田んぼや畑などの農地、1/3が人が住んでいる市街地、そして1/3が琵琶湖である。こういう姿になっているということを滋賀県の人もほとんど知らない。琵琶湖が1/6ということまでは知っている人はけっこういるんですけれども、私たちの県土全体がどういう姿で、どういうものが琵琶湖に入っているのか。140万人もの人が湖の回りに住んでいるということが、世界でみてもものすごく珍しい場所だということにもあまり私たちは気がついていない。そういうことをもっと知る必要があるのではないかと思います。


琵琶湖の水は綺麗になっている

 「琵琶湖の水は汚くなっている」ということをよく言われますので、ここで水質の変化をお示しします。この赤いラインが琵琶湖の北湖ですから、琵琶湖大橋よりも北側の透明度の変化ですね。ここは大正11年に10m弱ぐらいあったものが、昭和20年、30年代以降ほとんど変わっていない。南湖にいたっては、実は昨年度観測史上一番良い透明度を記録しています。さらにCODという汚れの指標、有機物の汚れの指標はどうかというと、琵琶湖条例、石けん条例というのができたのが昭和54年ですので、そこから少しよくなったんですけれども、少しずつ上っていって、今ほぼ横ばいという状態になっています。条例で規制をしたリンはでこぼこしながらも徐々に下がりつつあって、要するに琵琶湖は例えばリンで見る限り、すごく綺麗な方向に向かっているということが分かります。他の湖と比べてどうかというと、この2つが琵琶湖の北湖と南湖ですが、十和田湖よりは汚いけど、阿寒湖よりは綺麗な水。だいたい尾瀬沼並みかなということになります。


おわりに

 まあこれは申し上げたいことのごく一端なのですけれど、私たちの住んでいる町のことをまず知ることが必要だということです。そしてどこまできれいにするのかということになるのですが、それには科学的に考えることが必要ですし、さらにはお金と労力がかかるということを含めて、もう一度「自分自身の問題」として考えてみようということを申し上げたいと思います。
 LOHASに戻りますと、やはりもう一度それを自分のこととして受け止めた上で、自分の住んでいる地域の中で私が何をするのかということが、結局一番大事なことではないか、というふうに思っております。
 以上、問題提起と考え方のお話ということで終りたいと思います。ありがとうございました。

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