Land-Ecoシンポジウム
土壌第三者評価の意義
Land-Eco副委員長 滋賀県立大学環境科学部教授
川地 武 氏
Land-Ecoシンポジウム(H18.10.27)より


はじめに

 土壌第三者評価委員会の副委員長をさせて戴いております、滋賀県立大学の川地です。
 本来ですと委員長の菅原正孝先生からご挨拶を戴くところですが、本日は所用のため、代わってご挨拶をさせて戴きます。


今、注目の第三者評価

 世間では今、第三者評価ブームです。
 例えばインターネットで「第三者評価」を検索しますと、まず介護福祉施設の第三者評価がたくさん出てきます。おそらく介護福祉施設もかなり玉石混交の状態なのだろうと思いますが、各都道府県にあります。
 また、行政を評価する第三者評価も全国にあるようです。最近では学校も、外部評価といって第三者評価を取り入れています。
 このように世間では、とにかく当事者だけではどうもいけないというのが通説になりつつあります。


土壌汚染対策の現状

 5月の発足記念シンポジウムで菅原先生も言っておられましたが、土壌汚染対策法が2002年に制定され、2003年から施行されています。
 毎年、環境省のホームページ等で、法律に基づいた調査について、特定有害物質を使用していた工場の廃止が何件あって、そのうちどれくらいが調査されたのか、あるいは対策がどのくらい進んだのか等の資料が出ております。
 また土壌汚染対策法では、調査に基づいて汚染地域を指定することになっていますが、この3年間に百数十件の指定を受けています。そのうち約半数は対策が済んで指定が解除されていることから、全体の土壌汚染の数からするとまだまだかもしれませんが、土壌汚染対策法によって調査・対策が促進されたことは間違いないと思っております。
 法律の範疇でなされるものと同様に、民間同士の土地取引に伴って調査や対策がなされます。
 このように環境省の統計に入ってこないものも含めますと、地域差はありますが、現在かなりの数の土壌汚染の調査・対策がなされている、あるいは土地取引がなされていると言えるかと思います。


土壌汚染対策の問題点

 しかし当初から、いくつか問題点も挙げられておりました。現在1500以上の指定調査機関がありますが、中には必ずしも技術的に十分でないところもあるかもしれません。
 そのような中で、まずは調査の信頼性をどう担保していくかという問題があります。あるいは対策技術の選定が妥当だったのかというようなことも、必ずしも言えません。この分野は日進月歩ですから、お墨付きを与えられたものはそう多くないのも事実です。
 それではどういう技術を選択すれば良いのかや、対策が行われた後の土地の健全性に対して長期的な信頼性をどう担保していくのかに関しても、まだまだこれからという状況にあります。


第三者評価委員会の発足

 本来ならば公的な機関に相談に行けると良いのですが、なかなかお役所もそこまで手が回らないという状況にあります。
 そこでこの土壌第三者評価委員会を立ち上げて、既にいくつかの評価依頼を戴いています。私が携わったのはそのうちのいくつかですが、やはり第三者的な評価をなすためには、その人間の見識が問われますので、我々自身が問われているというつもりで臨んでいます。

 今日は、このような仕組みがそもそもどのような意義をもつのか、あるいは実際にこの仕組みを適用した結果どうであったかなどについて、いくつかの分野の方にお話を聞かせて戴きます。
 そして、この仕組みをさらに実りあるものにするためにはどうしたら良いかを考え、フロアの皆さんからのご意見を戴きながら、より充実させたものにしたいと思います。客観的で公正な第三者評価を創りあげていきたいと思っておりますので、よろしくお願い致します。

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