エコロジー研究会
松尾芭蕉
エコロジー研究会会長 井上 健雄
エコロジー研究会(H19.7.5)より

人生の3分類

 人生を3分類したらどんな形になるかということで、松尾芭蕉を例に紹介したいと思います。
 松尾芭蕉も初めから優れた俳句を詠んだわけではなく、伊賀の農民に生まれ、談林派に入って、その中から才気を発揮していきました。
 その時代は美的時代と言われるもので、欲望の赴くままに生きていた時代。「貝おほひ」という句集を出しています。これを読むと非常に才気煥発で、頭がいい人だなという感じがします。
 その時には「桃青」と名乗っていました。土建屋の大将としての活動もあり、非常にお金も稼いでいた時代です。

 しかし、いいことは長続きしないもので、松尾芭蕉には内縁の妻いたんですが、その内縁の妻(寿貞)が甥で弟子の桃印と駆け落ちをしてしまいました。その辺から人生の無常を感じ始めたのでしょう。
 その頃に「猿蓑」という句集を出し、「わび、さび、ほそみ」と新境地を開きました。代表句は「初時雨猿も小蓑を欲しげ也」です。
 この時に家を変わって隠棲に入ったのですが、家の前にお弟子さんが芭蕉(はせお)を植えてくれたので、しばらくは「はせお」と名乗っていました。この時代は倫理的時代に位置付けられます。

 こうした過程を経て初めて「松尾芭蕉」になって、「炭俵」を出し宗教的時代に入り、「かるみ」を見せ始めました。代表的な句は「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」です。

 人生を三段階で分けますと、美的な時代、倫理的な時代、宗教的な時代となります。この分類は、デンマークの思想家キルケゴールによるものですが、私なりに芭蕉の句集で位置づけをしてみました。如何でしょう。
 またイー・ビーイングの月間挨拶の6月号において、ニーチェの分類「駱駝か獅子か子供か」を投げかけております。一度ホームページで振り返って戴ければ、私の人生三分割コンセプトがもう少し分かりやすいかもしれません。


集合知の時代

 レジュメに「あなたはライトかレフトか」とあります。ここでビル・ゲイツとリーナス・トーバルズを挙げています。皆さんはビル・ゲイツとリーナス・トーバルズのどちらが好きでしょうか。
 ライトかレフトかというのは、右か左かという意味ではありません。ライトは著作権です。ビル・ゲイツは著作権をもって、ウインドウズのビジネスモデルを独り占めにして儲けています。
 一方リーナス・トーバルズのリナックスのように、自分が持っているノウハウを全部外に提供していこうというのがレフトです。有名なのは無料の百科事典「ウィキペディア」ですね。

 今時代は、ビル・ゲイツのような専門知の時代から、リーナス・トーバルズのような集合知の時代に入ってきたんです。
 素人ひとりひとりはあまり能力がないかもしれませんが、1人1日10分でも200万人が参加してくれたら、2000万分。8時間労働のプログラマー2万人強です。すごい時間になります。ビル・ゲイツが専門家を1万人雇ったって勝てやしないのです。
 だからできるだけレフトのやり方がいいわけです。

 次に挙げた電車男は、映画にもなった実話です。
 可愛い女の人を電車の中で見染めたけど、自分は内気で何も言えない。そこでインターネットに電車男として相談を書きこんだら、みんながいろんなアドバイスをくれた。そのアドバイスと励ましに従ってアプローチしたら、恋が成就した、という話です。
 これもやっぱり集合知を貰ったわけですね。そして共感創発というか、みんなが共鳴して感じて、新しいものを創り出した。
 そういう意味で我々エコロジー研究会も、共感創発のレフトの会になればいいなということで、最初に紹介しました。


儲かるための4つの質問

 21世紀はどうすれば儲かるかということで、4つの質問を書いています。
 まず、チェーンソーとマットレスの相関売り上げがありましたが、なぜだと思われるでしょうか?
 チェーンソーを使うと腰を痛めます。腰を痛めるとなかなか普通の布団ではしんどいので、マットレスに変えるということです。
 これはデータマイニングと言って、データを組み合わせて新しい価値ある情報を発見するということです。データマイニングの世界でも、どう読み取るかによって答えは変わってきます。

 次にもう少し深めた質問です。銀行の窓口に住宅ローンを借りに来た人のニーズは何でしょうか?
 住宅ローンを借りに来たんだから住宅ローンがニーズだというのは、答えは答えです。しかし住み心地のいい家で幸せな家庭を築きたいというのが本当のニーズでしょう。
 そうすると、ローンもニーズですが、不動産のデータベース、家の設計事務所、家具の販売店、引っ越しサービス、転居先の学校情報などのニーズも出てくるわけですね。だからローンを貸すだけじゃなく、その人の奥の生活に目を向けることが大事です。

 次に、iPodが成功したのはなぜか?
 iPodは今出たから成功したんですよ。5年前に出たら絶対成功していない。
 それはなぜかと言うと、次のような環境は以前はなかったからです。今は多くの人がパソコンを持っており、情報がブロードバンド化してきました。それから音楽がデジタル化され、著作権の問題がほぼ解決してきました。さらに携帯で音楽を聴くというライフスタイルが確立しました。この5つの状況なしには、iPodは普及しなかったわけですね。
 商品生態系が出来上がったからiPodが成功したんだということを申し上げたいのです。

 4番目は、顧客は見えているか?という質問です。
 例えばシニア顧客を考えてみましょう。金融機関からみたら、退職金を入れてもらってファンドを組むとか、定期預金を組むとか、金融商品を買ってもらうお客さんになるわけですね。介護会社からみると、いずれ介護が必要になるから囲い込みをしようとか、介護用品を売るためにどうするかということになります。玩具の販売会社にとっては、お孫さんの玩具を売るターゲットという風に見えるわけですね。
 そうすると、顧客中心主義と言っても、本当は全貌が見えていないのです。同じシニア顧客でも、見方によって答えが変わってくる。
 そういう意味で、これからは消費者の見方を変えなければなりません。


消費者の革命

 これら4つの質問に正しい答えを書く能力、行動力があって初めて、成功を勝ち取ることができるのです。
 では締めくくりとして、いちばん重要な消費者の変遷を眺め、理解を深めて貰います。

 消費者は今までの消費者ではありません。もう革命が起こっているんです。
 今までは生産者が一番力を持っていました。それからスーパーなどの販売者が力を持ち、今は消費者が一番なんです。

 しかし、その消費者も中身が変わってきております。これからはコンシューマーが力を持ち、次にプロシューマー、最後にメタプロシューマーが力を持ちます。
 コンシューマーとは、安く欲しいものを手に入れる為に共同購入の仕組みを作り上げていく(ギャザリング)消費者を指します。
 プロシューマーとは、プロデューサーとコンシューマーを足したもので、生産と消費を一緒にした能力を持ちます。こんな有機野菜を作ってくれたら買いますよ、除草を手伝うから農薬は駄目よ!というのがプロシューマーです。
 プロシューマーとメタプロシューマーの間には、アフィリエイターが出てきます。我々はエコ研で本の紹介をよくやっていますが、うちのサイトから紹介した本を買って戴くと、当社に若干のお金が入ります。それがアフィリエイターです。そうすると、井上は消費者でありながら商売人にもなれるという、主客融合ができます。
 メタプロシューマーは無数のプロシューマーを支援して、商品の開発を支援する中間業者です。多分これが今後最も力を持つだろうと思っています。だから我々は、このメタプロシューマーをどう育てていくかが課題だと思っております。

 例えば、You tubeとCurrent TVがあります。
 You tubeは草の根の人たちが自分で撮った動画を自由に載せられます。
 Current TVは「不都合な真実」のアル・ゴアが設立したのですが、草の根とマスメディアを合わせた相互浸透、相互進化をやろうとしています。
 これからはこういうものが力を持ってくるんです。マスメディアだけではだめなんです。
 タイで軍事政権に追い出されて失脚したタクシン氏は、軍事政権の民主化の実態を動画としてYou tubeに載せました。軍事政権はその動画サイトを潰そうとするんですが、すぐに移動される。
 このように、草の根というのが非常に大きな力をもってくる時代だと思います。

 その上をアル・ゴアがやろうとしている。世の中って目覚めていると大変面白いと思いませんか。
 あっ、そこの人!眠っていては駄目ですよ。

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