フィランスロピー研究所 今月のありがとう
フィランスロピー研究所
フィランスロピー研究所 今月のありがとう
2018年10月のありがとう
イメージ画像 傷む資本主義

 資本主義は何にもまして、運をつかむチャンスがあり、そして何より世界を活性化できる仕組みである。
 しかし今、世界中でこのシステムがうまく動いているとは思えない現象が増えている。
 「富豪8人と貧しい人の36億人の資産は同じ」だとBBCニュースが伝えている。
 1%の富豪が82%の富を持っている。
 不均衡極まれりとなってきている。
 もうこれは世界を活性化できるシステムとして、資本主義があるとはいいがたい現象である。いや現象というより、もう世界を活性化できない構造になっているのかもしれない。
 日本にはこれほどの富豪がいるとは思えないが、芸能人とチャラチャラしている人が何千億円もの資産を持っているとか……

 まぁこのあたりは運であったり時代適応であったりするからいいだろう。
 なぜなら知性より運の方が公平だと思うから。ランダム性が大きければ社会がシャッフルされてまた生き返るからだ。

 一方で旧来の仕組みでは、新時代に対応できない事態もいろいろ起こっている。
 たとえば、本屋さんの世界を見てみると、超大手の本屋さんなら15万冊位の本を店頭に並べている。
 大きいことが競争に勝つキーファクターだったのである。
 こうした状況下において、自分(それなりの有名人としても)の書いた自費出版の本を置いて貰おうとすればそれはたぶん無理だろう。
 しかしオンライン書店なら無限大に近い本を抱えられる。
 電子情報での読書もあるし実際の本もいらないしオンデマンド印刷という方法もある。

 この方が万人にとって読む・出版する機会に恵まれているのかもしれない。
 デジタルアクセスのできるという条件つきではあるが……
 デジタルの世界ではABC分析のA.B.にとらわれることなくCというロングテイルを商売にするという方法でもある。
 そうは言っても、私、個人的にはシアトルやボストン等の旧市街にある本屋が好きである。
 例えば、エリオットベイ・ブックカンパニーは新刊と古書を併せて販売していたりする。
 こんな魅力がある施設もアマゾンのマーケットプレイスに飲み込まれようとしている。
 マーケットプレイスの扱いは3憶5千品目以上とされている。
 本の出品数なら、450万冊を軽くこえるのでないか……
 リアルサイトでは、太刀打ちできない怪物である。
 アマゾンのこの仕組みを支えるのがFBA(フルフィルメント・バイ・アマゾン)というもの。
 これについては後述したい。
 公平な社会を実現することは、こうした状況ではそれ相応の蓄積を必要とし、周回遅れの国や人々にとっては非常に困難になってきている。

 その上、傷みつつある資本主義は、社会的な地位を獲得した人はその有利性を保つ為にあの手この手で現状追認の手を打ちつつある。
 資本主義なのに官の天下りや、外部団体に仕事を下す(表向きは公募の顔をしてとか……)不正で不効率を現存させてしまっている。
 自由な民間の活力を削ぐことが、官の生きる施策として復活しつつあるようである。
 これでは自由闊達な新規参入を認めないものになってくる。
 今、資本主義の直面する課題は、新しい局面を迎えているし、古くからある課題が、またぞろ頭をあげつつもある。
 頑張れ、起業人、自由人、イノベーター……
 私たちは、資本主義を少しでも良くし、国民に、市民に、よりリーズナブルなコストで、高い価値を提供しよう。
 それが持続的な社会というものだ。
 智慧あるブルーオーシャンの創造を進めねばならないと思う。

井上 健雄

フィランスロピー研究所
Copyright (C) Philanthropy Institute co.,ltd. All Rights Reserved