フィランスロピー研究所 今月のありがとう
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2014年5月のありがとう
イメージ画像 ロゼトの奇跡

 ロゼトについて語ろう。
 古き話であるが、今、尚、色褪せない話である。
 いや一層、心すべきかも知れない。

 ロゼトとは、アメリカ・ペンシルヴェニア州の人口千数人の田舎町である。
 ここは1950年代から1960年代にかけて、心臓疾患の死亡率が近隣の町に比べ極めて低く、全国の注目を集めていた。
 この低い死亡率は、喫煙、食事、運動などの要因では説明ができず、奇跡と呼ばれたのである。
 その後、研究が進められ、学術論文をはじめ、「ロゼト物語」(1979年)などが発行された。
 それらの至りついた結論は、「住民の共通の目的意識、連帯感」こそが奇跡の中身だと断じたのである。
 つまりロゼト社会全体が、一個人、一家族の枠を超えて、大家族のように機能し、コミュニティに支えられているという安心感を与え、心筋梗塞や突然死も極めて低いものとなったのである。
 イタリア系移民の町ということでもあり、少数民族として団結し生きてきたのである。
 誰一人見捨てられないという社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)が充実していたのである。
 だが残念なことに、1960年代以降は彼・彼女らの一体感・平等を重んじる価値観がなくなるにつれ、死亡率が上昇し、周辺コミュニティとの価値ある差をなくしたのである。

 こうした例を2つ紹介する。

(例1)シカゴの北ロンデール地区VS南ロンデール地区
シカゴ熱波による死亡率 北10:南1であった
※両地区は隣接し、高齢者、貧困率は変らなかったが、住民の絆が南ロンデールが強かった

(例2)フィンランド オストロボスニア地方
寿命
フィンランド語を話す人 69.2才 78.1才 →マジョリティ
スウェーデン語を話す人 77.9才 82.9才 →マイノリティ
◎特に健康寿命はもっと長い

 この両例とも、住民の絆の強弱が寿命に影響を与えたのである。

 このように見てくると、現代のグローバル化、資本主義の進展、核家族化、お一人様化などは、人を平安にせず、まだまだタイムラグはありそうだが、寿命の短命化、精神の不安定化を加速させているのかも知れない。
 こうした意味あいにおいて、私たちの健康、寿命、生き甲斐等も社会的な絆の中で育まれていることが分る。

 つまり私たちも一人ひとりでなく、それぞれが所属する団体をソーシャル・キャピタル形成し、サステナブル構造に仕上げていく所に、私たちの健康や希望が、そして地域社会の平穏が生まれると考える。
 私たちの仕事の一つひとつの積み重ねが、ソーシャル・キャピタルになれば最高です。

井上 健雄

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